
夏至の日、ずっと一度お会いしてみたかった、生命誌研究者の中村桂子先生の講演に行ってきました。
現在89歳。凛とした立ち姿と軽やかな足取り、そして、ひとつひとつの言葉に宿る信念に圧倒されました。
先生が提唱されている「生命誌(せいめいし)」は、生きものを遺伝子や細胞としてだけでなく、どう生まれ、どう生き、どうつながってきたか――
“命の物語”として見つめなおそうという学び。
科学としての確かさと、日々のいのちの実感が、やわらかく結びついているのです。「生きとし生けるものを愛でたくする生きものについての学び」とも言えるのではないかと、私は感じています。
講演のテーマは、「私たち生きものの中の私として生きる」。
私たち人間を含むすべての生きものは、DNAに共通の部分をもっている。
つまり、科学的にも「みんな仲間」なのだと。
そこに、上下関係はないんです。
生きものの世界は、「フラットでオープン」。オープンとは境目がないこと。つまりすべてがつながっているんです。
だから人間も、“上から目線”ではなく、“中から目線”で他の生きものと向き合わないと。
効率や均質や機能を求めて、機械のように生きものを扱ってはいけないんです。
生きものは、プロセスや多様性や関係性が大事です――
と。先生は静かに、でも強く語られていました。
そして最後に、源氏物語の「虫愛づる姫君」は虫のいのちを愛でていたという話をされたあと、人間が大切にすべきこととして
「愛づる(めづる)」ことをあげられました。
「愛づる」なんと、いい言葉なんでしょう。
「愛する」よりも、「愛づる」の方が、もっと深く力強く自分の芯に響き、自分も立たせる行為のように感じます。
講演のあと、頭の中でリピートしていたのは、「手のひらを太陽に♪」
これ、アンパンマンの作者、やなせたかしさん作詞です。
♪オケラだって ミミズだって アメンボだって
みんな みんな 生きているんだ 友だちなんだ♪
体の中も、自然界も、ほんとうは「フラットでオープン」。
その一つひとつを、愛でていくこと。
それが、他のイノチを「愛づる」ことに、自然とつながっていく。
だから、まずはそこをしっかりしようと、再確認して帰ってきました。
中村先生、ズシンと響く警鐘をありがとうございました。
自分の実践の場で生かしてまいります。
最後までお読みくださり、ありがとうございました。

