「♪虹の地平を歩み出て
影たちが近づく
手を取り合って
町ができる
美しい町が
あふれる旗
叫び そして唄♪」
ピョンチャンオリンピックが始まる少し前、
1972年札幌冬季オリンピックのテーマソング
トアエモアの「虹と雪のバラード」がラジオから流れてきた。
「あふれる旗・・・♪」
このフレーズに、
わたしの体の奥が反応した。
***
1992年のバルセロナ五輪のとき、
瓢箪から駒のような話が続いて、
私は、ラジオでの女子マラソンの解説者に
抜擢していただいた。
バルセロナ郊外の空港から
街の中心部にあるホテルまで移動する車窓から
目に飛び込んできたのは、
街にあふれる万国旗だった。
バルセロナの街中が、
小学校の運動会の校庭モードなのだ。
大きな国の旗の隣に、
小さな国の旗・・・。
オリンピック表彰式で見慣れた旗、
見たこともない旗・・・。
色とりどりの万国旗がゆれ合う景色。
ウエルカム!
世界中の人たち!
ウエルカム!
国の超え、人種を超えて、
本気で一つのことにイノチを懸けてきた人たち!
そんなムードが街にあふれているように感じた。
それを目にした時、
「人間って、すてきだな」
「人類って、やるじゃん」
って、思った。
熱いものがこみ上げてきた。
***
マラソン解説の仕事を終えたあと、
いろいろな競技を生で見てまわることができた。
そこでも、本気も本気の勝負ならではの
身心の躍動美に、私の身心は震えた。
しかし、
帰国後、
「何に感動したかってね・・・」
と近しい人に話をしたのは、
万国旗がはためく街にあふれる
人間賛歌のようなものに、
心の琴線が震えた話だった。
このオリンピックで
女子マラソンの銀メダリストとなった有森裕子さんも、
オリンピック後に、
どこかのインタビューで
同じようなことを話されていたと聞いた。
時代は猛スピードで変わり、
スポーツ、オリンピックを取り巻く状況もどんどん変わる。
特にピョンチャンオリンピックは、
とってもアバウトにいうと、
「オリンピック=人類の身心を極める祭典」
であってほしいと願う私のココロを
ざわつかせることがたくさんあった。
オリンピックの魅力が色褪せることもあった。
けれど!
やはり始まってみると、
そこには、理想を求める、求めたい
人類の姿があるように思えてならない。
開会式で「イマジン」が歌われた時に
そう思った。
理想とは、
理(ことわり)
を想うこと。
理は夢ではない。
たぶん、
宇宙のしくみとして
元々あるもの。
あるものを想い、
そこに向かって行動する。
元々あるのだから、
そこに向かうことは、
夢物語ではない。
そう信じたい。